さて、「海外在住の日本人家族」と一言で括れないほど、日本へ帰国するのか否か、どの程度まで日本語を習得するのか、家庭での日本語の重要度…などによって千差万別です。
それぞれの家庭に合った
ムリなく・ムダなく日本語力を伸ばす方法について考えていきましょう。
まず初めに、言語力は、
生活言語能力(Basic Interpersonal Communication Skills: BICS)
学習言語能力(Cognitive Academic Language Proficiency: CALP)
上記2つに大きく分けられます。
これらはそれぞれ異なる役割で、言語発達においてどちらも必要な能力です。
生活言語能力
日常生活をこなすための基本的なコミュニケーション能力を指し、
新しい環境に適応する際に最初に身につける言語能力のことです。
日常の挨拶や友達との会話、買い物などの場面で、
頻繁に使われる具体的で状況に依存した日本語力です。
海外に移り住んでから短期間(1年未満)でも習得が可能です。
学習言語能力
学校の教科学習や専門的な知識を習得するために必要な能力であり、
より抽象的で論理的な言語運用能力を指します。
教科書や学術的なテキストの内容を理解し、
複雑な概念を説明するために用いられる日本語力です。
生活言語能力を習得するよりも長い時間と特別な指導が必要です。
もちろん、どちらの言語能力もバランスよく育成することが望まれますが、
海外在住の家庭においては、
日本へ帰国予定のあるなしや、日本語の重要度や必要度などにより、
どちらか一方に偏ってしまうことがよくあります。
それぞれの家庭のニーズに合った
言語能力バランスを考慮し、日本語学習に取り組むことが大切です。
日本へ帰国予定がある家庭
一時的に海外に滞在している家庭では、
日本へ帰国後のスムーズな学校生活への復帰を重視しましょう。
つまり、「生活言語能力」と「学習言語能力」が大きく偏ることなく
バランスよく伸ばすための取り組みが重要です。
まず、「生活言語能力」については、家庭内で日本語を使うことを意識しましょう。
これを徹底するだけでも、一定のレベルまでは難なく伸ばせます。
しかし、海外在住期間が長くなればなるほど
年齢に合わせて順調に日本語の語彙力を向上させるのはかなり困難です。
語彙力向上には、親子の会話レベルを順次上げることが不可欠となります。
・時事ニュースについて意見を交換する
・読書後に感想を言い合う
・調べたことを自分の言葉で説明する
家庭での会話のポイントは、
少し難しい語彙・語句を使った会話を親が心がけることです。
例えば、
そろそろ春の兆しが感じられるようになってきたね。
今年は応援しているチームが立て続けに負けてしまったわ。
車が行き交う道路を渡るときは注意してね。
子どもが日常会話で使いにくそうな言葉を積極的に使ってあげましょう!
また、
帰国後の学習ギャップを最小限に抑えるためには、
「学習言語能力」もしっかり伸ばさなければなりません。
日本の学校教育に準拠した教科書やカリキュラムに取り組みながら、
・一定量の本を読む
・短歌や回文などの言葉遊びを楽しむ
・作文や日記を書く
恐らく最難関は「一定量の読書」でしょう。
読む本によって、読書の仕方を変えると、少し実行しやすくなりますよ。
想像力を刺激するフィクションの本は
他人の感情や経験に共感する力も養われます。
ぜひ勉強の合間のリラックスとして、多読(たくさん読む)してください。
一方、
事実に基づいているノンフィクションの本は
広範な語彙や知識を増やし、世界の理解を深める助けとなります。
分からない語彙の意味を調べ、
内容をきちんと理解しながら、精読(じっくり読む)しましょう。
海外永住予定・長期滞在の家庭
日本語で会話できれば良いとおっしゃる海外在住家庭の多くは、
現時点で日本語での親子の会話がほとんど成り立っていません。
その理由は明らかで、これまで家庭で声かけをしてこなかったからです。
一定レベルの日本語での会話力は家庭で育まれます。
海外でのバイリンガル教育においては、
幼少期から積極的に家庭で声かけする親の姿勢が不可欠です。
・日本語での声かけを徹底する
・毎日の読み聞かせを欠かさない
・一日の中で日本語だけの時間を作る
・日本の文化や伝統を取り入れたイベントへ参加する
しかしながら、
上記をすべて実行したとしても、年齢が上がり、親子の会話が減るなどで
家庭での日本語環境が薄れてくれば
環境に左右される「生活言語能力」は徐々に消滅してしまいます。
せっかく育んだ会話力を維持するには「学習言語能力」で支えなくてはなりません。
ただ、日本へ帰国予定がある前述の場合とは違い、
日本の学習要領に沿った教科書を使った定型のカリキュラムは
永住・長期滞在の子どもにとっては、必ずしも有効とは言えません。
日常生活で実際に使える日本語力を
読み書きの中で練習しながら習得させていくのがおススメです。
例えば、
好きな本や記事を書き写す
ウェブサイトや書籍を日本語で読んで理解する
日本の映画やドラマの台詞を覚える
日本語の読み書き力は、家庭で育んだ会話力を持続することができますよ!
家庭学習方法のおすすめ
(1)日本語教材を使う
市販のドリルは、家庭でも気軽に日本語の読み書き練習に取り組めます。
ただし、
ドリルやプリント学習は、つい無理をさせてしまい、
どんどん終わらせることが目的となってしまいがちになるので注意しましょう。
「知っている」「見たことがある」「やった」だけで次へ次へと進まず、
「できる」「一人でできる」「早くできる」ようになるまで
同じ教材を何度もくり返すことが確実な読み書き力習得への近道ですよ。
なお、みらい塾でもオリジナル教材を販売しています。
読み➝写し書き➝一人書きと系統立てて作られているので
ムリなく・ムダなく・楽しく日本語力が伸びる工夫が満載の教材です。
日本語教育のためだけでなく、補助教材としても最適ですので、
ぜひ一度お試しください!
(2)日本語教室などに定期的に通う
ニューヨークを始めとする大都市には補習校や日本語教室が多くあります。
経済的に余裕があれば、そうした施設を活用しましょう。
ただし、
補習校はあくまで日本へ帰国する家族をサポートするのが目的です。
一斉授業が永住家族のニーズと合うとは限りません。
実際の授業風景や、先生や生徒の雰囲気などを事前に確認し、
自分の子どもに合っているかを見極めてから入学しましょう。
また、多くの日本語教室では、対面でもオンラインでも受講できます。
小学校中学年ごろ(~10歳)までは対面での学習が良いでしょう。
画面越しの先生に子どもが集中していなくては、
せっかくの素晴らしい授業も身に付きませんからね。
加えて、「楽しい!」「簡単!」ばかりでも言語は習得できません。
定期的にレベルアップが見込める学習内容かどうかをきちんと判断しましょう。
日本語教室やオンラインレッスンなどを通じて
「学習言語能力」も合わせて、ゆっくり伸ばしていけるように工夫してあげてくださいね!
(3)長期休暇を利用する
夏休みなどの現地校の長期休暇を利用して、キャンプや季節講習を受けてみましょう。
子どもが好きなスポーツやアートなどを通じて、
楽しみながら日本語に触れられるのは良いですよね。
ただ、単発講習に時どき参加では、劇的に日本語力は向上しません。
あくまでも日頃の日本語学習のブラッシュアップとして活用するのが良いでしょう。
ちなみに、みらい塾でも春・夏・冬休みの休暇期間中に
5日間単位での集中スクーリングを開講しています。
すでに読み書きができる子には、総合的に日本語力が伸ばせる作文コース
苦手なところがある子には、じっくり学べる個別コース
ほかにも、冬期スクーリング限定の年賀状コース なども人気です。
ご興味がある方はお気軽にお問い合わせください。
それぞれの家庭のニーズに合った言語バランスをきちんと見極め、
親が徹底したサポートをすることで子どもの日本語力は格段に伸びます。
バランスのよいバイリンガルを目指してがんばっていきましょう!
みらい塾はニーズに合わせたサポートをします!
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